お米の品種について

当農園では現在「コシヒカリ」「亀の尾」「ハッピーヒル」の三種類のお米を栽培しております。

「亀の尾」とは

明治時代に山形県の「阿部亀治」によって育てられた昔ながらの在来種のお米です。
冷害に強く、食味に優れるため明治時代には「西の旭、東の亀の尾」と呼ばれるくらい普及していました。

ですが、丈が高くなり栽培しづらく、化学肥料を使うと米がもろくなるという欠点から現代の農法に向かず、徐々に作られなくなっていきました。そのため今では「幻のお米」ともいわれております。

現在よく食べられているコシヒカリやササニシキなどは亀の尾から良い食味を引き継いでいるといわれております。

「ハッピーヒル」とは

自然農法の世界では知らない人はいない農学者の故福岡正信氏によって生み出されたお米です。「福=ハッピー」「岡=ヒル」で「ハッピーヒル」と名付けられたそうです。

戦地のビルマから日本兵が持ち帰った品種と日本のお米を掛け合わせによって作られたといわれております。
雑草に強く、畑でも田んぼでも育つ力強いお米です。


↑茎が太く、開帳しており逞しく育つハッピーヒル

なぜ「亀の尾」や「ハッピーヒル」のようなお米を作っているのか?

「亀の尾」や「ハッピーヒル」にはサッパリしているという共通点があります。昔の日本人が食べていたお米は今のようなモチモチで甘いお米ではなく、在来種に近い「亀の尾」のようなさっぱりした品種のお米を食べていたのだろうと思います。ですから毎日たくさん食べても太らず健康的に過ごしていたのではないでしょうか?

私たちは現代の日本人にもたくさんお米を食べて健康的になってほしいとの思いから「亀の尾」や「ハッピーヒル」のようなお米を栽培しております。

品種は現在、田んぼの状況に合わせて試行錯誤しているところであり、今後変更することもあるかもしれませんが、サッパリしたお米の品種は作り続けたいと考えております。

モチモチのお米とサッパリのお米の違いは?

まず、お米の主成分は炭水化物ですが、そこに含まれるデンプンは「アミロース」と「アミロペクチン」によって構成されています。

「アミロペクチン」の割合が多いほどモチモチとした食感となります。「コシヒカリ」や「ミルキークイーン」といった品種は日本人好みのモチモチ品種ですが、いずれも「低アミロース」、つまり「高アミロペクチン」です。ちなみにもち米は「アミロース」が含まれておらず「0アミロース」です。

一方、「亀の尾」「ハッピーヒル」「ササニシキ」「旭」などの品種は「高アミロース」であり、モチモチの「アミロペクチン」の割合が比較的少ないため、サッパリとした食感になります。

食感の違いだけではなく「アミロース」はその分子構造により、消化に時間がかかり、血糖値が上がりにくいという特徴をもっております。



血糖値が上がりにくいお米ってどうなの?

食品を食べたときの糖質が吸収される度合いを示す数値に「GI値」というものがあります。
高いほど糖質が吸収されやすく、血糖値が上がりやすい食品であると言えます。

一般的に白米より玄米、小麦粉なら全粒粉の方が「GI値」が低く、糖質が吸収されにくいとされています。
つまり血糖値が上がりにくく、インスリンの分泌も抑えられるため脂肪も付きにくいということです。

また、血糖値の乱高下による食欲増加、眠気なども生じにくいというメリットもあります。

そして、サッパリ系のお米は消化吸収に時間がかかり血糖値が上がりづらく、まさしく「低GI食品」であると言えます。

私たちも毎日「ハッピーヒル」を食べていますが、白米を食べた後にありがちな急な眠気に襲われることがかなり少なくなったと感じております。

さいごに

現代の日本では、お米のおいしさといえば「モチモチで甘い」というのが一般的になっていると思います。

ですが、世界の米食文化圏で食べられてるお米のほとんどはインディカ米といってパラパラしたお米を食べているのです。

つまり、モチモチで甘い米が好まれているのは日本独自の文化だということです。
私はそういったお米を否定する気持ちは全くありません。もちろん「コシヒカリ」のようなお米も好きですし、食べています。

そもそも「コシヒカリ」やその系譜をたどるモチモチ系のお米は戦後に品種改良によって生まれたお米であり、元来日本人が食べていたお米とは違った特性をもったお米だということを理解しておく必要があると思います。

江戸時代の飛脚に肉を食べさせたら走れなくなったというのは有名な話で、それだけ米中心の食事が日本人の体に適しており、一日5合食べていたといわれている当時のお米と今のお米が違っていたということです。

ですが、

「本当はお米が好きだけど食べたら太るから控えている」

「糖質制限をしてるからお米は食べない」

残念ながらこのような考え方が蔓延してしまっております。すべてのお米が太りやすい、体によくないと言っているかのようなメディアのお米の扱い方もよくないと思っています。

その結果、お米の消費量は50年前の半分までに落ち込んでしまい、農業衰退の一因になっていると考えます。

そもそもお米を食べても太らないし、バランスの良い食事など頑張ってとらなくとも、お米、おしんこ、みそ汁の一汁一菜だけで日本人は本来十分なのですから・・・

私たちはお米づくりを通して、お米の選択肢が広がり、お米の魅力が再度多くの日本人に伝わるよう努めてまいります。そして日本人が大切にしてきた稲作文化、里山の自然環境が次の世代につながっていくことを願っております。